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死の外科医と四季姫

第12章 ただいま


「世界政府が喉から手が出るほど欲しい存在である四季姫が、たった一人でこんなところで何してんのよ」

まずい、とノエルは思った。マリージョアからも海軍本部からも近いこんなところで青雉とぶつかれば、ノエルはあっさりと捕まってしまうだろう。

どうするべきか、と考えていたノエルの目の前で、青雉が両手を挙げた。

「そんな警戒しないでよ。おれはお前を捕まえようとか思っちゃいねーから」

「っは?」

意外な言葉に、思わず間の抜けた声が出た。
海軍大将がそんな事を言っていいのだろうか。

「おれは今サボ…………休憩でこの島に来てるわけだし、そもそもおれはだらけきった正義掲げてるから、四季姫とやりあおうなんて面倒な事はしないよ」

ええええええ、この人こんなんで海軍本部は大丈夫なの? と、割と本気で心配した。

「とにかく、おれはお前さんを捕まえたりはしねェから、安心なさいよ」

信じてもいいとは思ったが、万が一のために翼だけは出したままにしておいた。

「あらら、あんまり信用されてねェな」

ま、そりゃそうか、と青雉は自嘲した。
その様子に違和感を感じつつ、ノエルは注意深く青雉を見つめた。

「海軍を代表して、おれが謝っておく。四季島の件、悪かった……!」

急に頭を下げられて、混乱するノエル。それはそうだ、いきなり海軍大将に頭を下げられたら、誰だって驚く。

「本来バスターコールは中将五人以上の命令の元実行されるもの。なのにあの日四季島に行った奴が、独断で実行した。

そしてお前を無理やり捕まえただけではなく、島民の住むべき島も無くした。

元島民からの批判はすごいものだった。島民一人一人に住みたい島へ送り届けたりはしたが、それでもいい顔はされなかった。

当然だ! 島民達は何よりお前さんを愛していた。あんな事をして許されるはずがない。

その上逃げ出したお前を捕まえようとしたあの少佐。あの二人がやらかした事のデカさは計り知れねェ……!

海軍本部の人間として、こんな事を言うのはどうかと思うが、おれ個人としてはあの二人をお前がぶっ倒してくれて、本当に良かったとは思ってる」

その言葉を聞いたノエルは、やりきれない思いでいっぱいだった。

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