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死の外科医と四季姫

第12章 ただいま


「今そんな事言われても時間は戻らないし、私達の傷が癒えるわけでもない。けど、あなた方海軍本部の見解が聞けてよかった。

それに、私はあのバスターコールがなかったら、今の仲間に会えなかったし、海賊にはならなかった。そこだけは感謝してるわ」

今度は青雉が驚く番だった。このお姫様、いつの間に海賊になりやがったのか、と。

本来なら即刻捕まえなければならない。だが

「今日だけはお前が海賊になった事は聞かなかった事にしてやる。けど、次はないからな」

と言い残し、その場から立ち去ろうとした。

「待って!」

とノエルに服の裾を掴まれ、立ち止まらせられた。

「ねェあなた、─────って言う人が今何処にいるか知らない?」

青雉は暫く考えてから、ようやく口を開いた。

「知らねェな」

「そ、う……ありがとう」

今度こそ青雉は立ち去っていった。

やっぱり一泊休んでから向かうのはやめよう。今すぐにローに会いたい。みんなに会いたい。

すでに離れてから三ヶ月が経っている。もう会いたくて会いたくてたまらなかった。

「行くか!」

ノエルは勢いよく地面を蹴って空を飛んだ。

このまま真っ直ぐに進んでいけば問題ない。ノエルの中の何かが、ちゃんと彼女をポーラータング号まで連れて行ってくれるだろう。


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いくつもの島を見た。それらはこの先ノエルが大切な人と歩んでいく冒険の島々。
どんな冒険が待っているのだろう。

早く帰りたい。その一心で飛び続けた。

何時間飛んだのだろうか。いや、実際にはそんなに飛んでいないのかもしれない。

けれど、飛んでいる時間がノエルにとってはとても長いもののように感じられた。

やがて、空がオレンジ色に染まり、海も同じような色に染まりつつある中、海上に黄色い潜水艦が浮上しているのを見つけた。

やっと帰ってこられたのだと、急降下した。その双眸には涙が滲んでいる。

たった三ヶ月、されど三ヶ月。
ノエルにはその三ヶ月が何年もの時間に思えた。

甲板には誰もいない。ゆっくりとそこに着地した。急にドキドキしてきて、夢ではなかろうかと自身の頬を抓った。

痛い。夢ではない。中へ入ろうと一歩踏み出した瞬間。

背後でザバァ! と大きな音がした。

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