第10章 思わぬ人達との再会
「やーっと帰ってきたのね。もう、半年以上も帰ってこないんだから。あら? そちらのお嬢さんは?」
「ああ、ノエルちゃんだ。マリアの娘さ」
「あらあら、可愛い子ね。私はシャクヤクよ、シャッキーって呼んでちょうだい」
「ノエルです、よろしくねシャッキーさん」
一通り挨拶を済ませると、シャッキーは店を閉め、レイリーとノエルが話す場を設けてくれた。
「マリアとは昔、四季島で会ったのさ。我々は運がいいと、いきなり奇襲を仕掛けられたな」
「お母さんらしいや……財宝目当てだったでしょう?」
「ああ、ロジャーとマリアの一騎打ちは三日三晩続いたが、結局勝敗はつかなかった」
お母さん強すぎでは……? とノエルは心底驚く。ヤンチャな方だとは思っていたが、そこまでとは思わなかったのだ。
「やがてロジャーとマリアは仲良くなっていて、ロジャーは彼女を船に乗るよう言った。マリアは面白そう、とあっさりと承諾。あの時ほど驚いた事はないな」
ははは! と豪快に笑うレイリーとは反対に、ノエルは驚きが止まらない。
(海賊王と意気投合するとか正気かお母さん)
「マリアは四季姫だからと言う理由で、船員以外の前では顔を隠していたからな。海軍の手配書も、いつも似ていない似顔絵だったし…………その能力からか、ずっと【夢追い】の名前で呼ばれていたな」
「え、ちょっ、ちょっと待っておじさま! 能力って何?」
「何だ、知らなかったのか? マリアはユメユメの実の能力者だった。ノエルちゃんが小さい頃、悪夢を見なかったのはそのおかげさ」
いくつもの衝撃的な話のせいで、キャパオーバー寸前だ。が、これでマリアとレイリーが仲良い理由に納得した。
「うふふ、ノエルちゃんったら驚きで言葉も出ないのね。あ、そういえば今日、偉大なる航路前半の海行きの商船が出港するみたいよ?」
「先に言って⁉︎」
シャッキーのお陰で何とか帰れそうなのだが、準備する時間が殆どなかった。
「ありがとう、おじさま、シャッキー。お金は今度シャボンディ諸島に来た時に返すね」
シャッキーがくれたのはウサギのリュックと、ピンク色のキャリーケース。キャリーに、急いでレイリーと買いに行った服を詰め込んだ。
「いや、それは小遣いだから、返さなくていい」