第10章 思わぬ人達との再会
その日からしばらく経った。ノエルの怪我はほとんど治っていたのだが、何故かまた翼の生え変わりが起こってしまった。
「うーん……生え変わりの時期が狂ってきちゃったのかなァ…………」
抜けるたびにエースは羽を集め、枕やクッションを作っていたらしい。ホクホク顔だ。
ノエルにずっとここにいるよう懇願しているが、そうする訳にはいかない。
彼女の帰りを待ってくれている人達がいるのだ。一刻でも早く帰らなければならない。
そして、怪我も完全に治りきり翼も抜け落ちなくなった頃。
ノエルはモビーディック号を出る事にした。
ロー達と別れてしまってから、既に二ヶ月が経っていた。
「それじゃあオヤジさん、みんな、お世話になりましたっ! いつかまたあい会えたらいいですね!」
ばさりと翼を広げて、ノエルは宙に飛んで行った。
一枚の羽を残して。
その背中を、白ひげ海賊団はいつまでも見つめていた。
「ノエルちゃん、可愛かったなァ」
「あのアメジストの瞳さいっこう!」
「おれはあの絹みたいな亜麻色の髪が好きだー! ふわふわなのにサラッサラとかもうたまんねェ」
「お前らー! ノエルには恋人いるんだぞ!!」
「狙ってるとかじゃねェよ!」
「お近付きになりたいってだけだ!!」
エースと船員の戦いが始まった。
彼のテンガロンハットには、ノエルの羽が付けられている。
それに気付いた船員達は、奪おうとエースに摑みかかる。
ついに乱闘へと発展。あのイゾウですら参加している。
「そんなに欲しいならノエルに頼みゃよかったろ!!」
「烏滸がましいだろ!!」
「めんどくせェな!!」
最早白ひげ海賊団はノエルのファンになってしまったようだ。
船員達がわいわいと盛り上がっている中、サッチだけは海を見たままボーッとしていた。
「どうしたんだ? サッチ」
「んー、あのさノエルちゃんって可愛いって言われても、そんな事ないーって、いっつも否定してたなって」
謙虚なんだろうな、とマルコは言うが、サッチは納得のいかない様子。
「どうしたんだよい、お前らしくもねェ」
「ノエルちゃんってさ、──────のかなって思ってさ」
それを聞いたマルコは、しばらく目を見開いたあと、有り得る、と呟いた。