第1章 出会い
それから間取り図を見ながら部屋の広さや窓の有無、カメラの設置箇所等を再度確認を行った。
「最後に1つお聞きしても?」
「何かな?」
「密売組織と癒着しているとはいえ、このパーティーに参加できる程度には交友があるんですよね?それにも関わらず我々の方を取った理由は何です?」
「おい、太宰っ!?」
「ははっ。中々鋭い質問だね~」
中也に向かって「気にしてないよ」というつもりなのだろう掌をヒラヒラとさせて宝条氏は太宰の方を向いた。
「輸入家具業者に癒着した彼等はこの取引を成功させた暁には活動拠点をこの地、横濱に置こうとしている」
薬物汚染は反対派なんだ、と笑いながら云う宝条氏。
太宰は「ハイリスクが伴うのにそれだけの理由で協力するとは思えない」と云おうとして、「もう1つはね」という続き言葉によって遮られた。
「家具輸入業者は、提携関係にある骨董家具業者にまで『儲かる話』として持ち掛けているようでね。本格的な説明が本日行われることになっているようなんだ。骨董家具業者の社長とは仲が良くてね。今回の話を聞いて直ぐに『善く無い話』だと思って私に相談してきたんだ」
「……それが理由?嘘でしょう?」
「太宰!」
偽善者がする事だよ、とぼやいた太宰に中也が慌てて注意するが宝条氏は気にして無い様子だ。
しかし、「未だ続きがあるんだよ」と真剣な面持ちで続けた宝条氏の雰囲気に、中也だけでなく太宰も真剣な眼差しを送りかえした。
「その骨董家具屋はねーーー」
間取りや監視カメラ、来客の話をした時でさえ此処まで緊張感が高まっていなかった。
ゴクリ、と中也は思わず唾を飲み込む。
しかし、
「娘がとーーっても気に入っている会社なんだ!」
「「・・・。」」
だからね!?何としても悪事に巻き込まれて倒産なんてさせるわけにはいかないんだよ!!等と嘆いている言葉は正確に聞き取れ………否。聞く気がない。
間違いない。
この人は正しく首領の友人だ。
そう確信すると同時に、
二人の緊張感は一瞬にして何処かに遊びに出掛けてしまったのだった。