第1章 出会い
却説、と。
今回の作戦を確認するべく口を開こうとしたところで二人は扉の方を注目する。
「「!」」
人の気配が近付いてきて、部屋の前で停まったのだ。
太宰は自身の腕にある時計を見る。
パーティーが始まるまでにはあと30分はあることを確認した上で、太宰は再び扉の方を向いた。
太宰は、中也に目配せをする。
『設定通りに』という念押しーーー。
その事を正しく理解した中也はコクッと首を縦に振った。
それとほぼ同時だった。
ガチャリ、と扉が開いたと同時に声が先に入ってきた。
「確かこの部屋に活けてあった筈~♪」
作詞作曲:歌っている本人と思われる軽快な歌を口ずさみながら這入ってーーー。
正確には扉を開けてドアノブを握ったまま、一歩だけ踏み入れた瞬間に太宰と中也に気づいて足を止めたのは、自分達とあまり年の変わらない少女だった。
「……。」
「「……。」」
その状態で見詰め合うこと数秒。
「えっと…失礼しました」
少女はそれだけ云うと、パタンと扉を閉めてその場を去っていったようだった。
遠ざかっていく気配に首を傾げる中也。
「何だったンだぁ?今の」
「さあ?でも叩敲せずに入室してきたってことは、部屋を自由に行き来出来る人間且つ私達が居たことを本当に知らなかったってことでしょ」
「まあ……敵意は全く無かッたけどよ……」
中也の言葉の歯切れが悪い理由を太宰は理解していた。
入室してきた少女の服装は今からパーティーに参加する者とは言い難い、ラフな格好だったのだ。
「まあ、家政婦とか掃除婦なんかも居るからね。私達には関係無いことだよ」
「……。」
そう太宰が云ったと同時に、今度は叩敲が鳴った。
太宰と中也は一瞬だけ顔を見合わせて「どうぞ」と返事をした。
入室してきたのは首領の友人でパーティーの主催者である宝条氏だった。
パタンと扉を閉めて鍵を掛けた。
「先程は挨拶もそこそこに済まなかったね」
「いえ。お忙しいのは分かっていますので」
営業スマイルを浮かべながら返事をする太宰。
「其方の君も今は話していて構わないよ」
「!?」
宝条氏が中也にそういうと、中也は確認をとるように太宰の方を見た。