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【文スト】スケッチブック

第1章 出会い


パーティー当日 ーーー

二人は迎えに来た外車に乗って大きな屋敷へとやって来ていた。
門から屋敷までさえ移動しなければならない広さに思わず太宰が声を上げる。

「噴水に、花の咲き乱れる庭……あ、池もある」

「……。」

そう時間が経たない内に車は屋敷の玄関の前に停まった。

玄関には穏やかな笑みを浮かべる30代半ば位の男性と、初老の男性が立っていた。
車から降りると太宰は笑みを浮かべている男性に歩みより、同じ様に笑顔を浮かべて手を伸ばした。

「本日はお招き頂きまして誠に有難うございます」

「いやいや良く来てくれた。矢張り君達にお願いして良かった。新作の着こなしも完璧だから良い宣伝になる」

「恐れ入ります」

ふふっとにこやかに話している太宰を少し下がった位置で見ている中也だが、意識は斜め上ーーー
丁度、パーティー会場になるのだろう大きな窓ガラスにあった。


視線は1つじゃねえな………新たな来客が来る毎に確認してる奴が複数居るってことか。


初対面だと云うのに予め与えられた「設定」通りに会話をしている太宰と、その二人の会話を聞き逃さないように配慮しつつも周囲の確認を怠らない中也。

そんな二人に関心するように満面の笑みを浮かべると、首領と旧知の仲である宝条氏は二人を屋敷の中へ導いた。
他の接待があるのだろう。控えの部屋に案内してくれたのは一緒にいた初老の男だった。部屋に着くまでの僅かな時間で、つい一年ほど前から宝条の執事をしている、なんてどうでもいい情報まで聞き出している太宰の口の巧さに感心しながら無言で後ろを付いてきていた中也は、部屋に入るまで一言も話さなかった。


パタン、と扉が閉じる。
少しの間、静寂が部屋を支配する。
太宰はキョロキョロと部屋を見渡し、最後に扉を三秒ほど見つめ終わると漸く静寂を破るように口を開いた。

「もう良いよ」

そう云われると直ぐに中也が大きく息を吐いた。


「手前に任せておくと楽で良いな」

「ふんっ。後で目一杯こき使ってやるんだから」


未だ社交辞令に疎い中也は、モデルの他に「あまり話せない」という追加設定があった。
ーーーそのお陰で、太宰よりも周囲の警戒に力を注げる。


つい最近から二人を『相棒』に仕立てあげた首領の設定は、流石と云わざるを得ない程に二人の特性を熟知しているものであった。
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