第1章 出会い
作戦会議も兼ねて、太宰は中也が借りているマンションに来ていた。
太宰の部屋でも良かったのだろうが「足の踏み場がないけど良いの?」という太宰の問い掛けに、中也が是と云わなかったからだ。
「ふーん。輸入家具に違法薬物を紛れさせて、か。よく聞く話だね」
「招待客は美術や装飾、服飾関係の人間ばかりかよ」
「そうみたいだねえ。だから下手な格好させられないってことでしょ」
そう云って、手元の書類から机の横に置いていた箱に視線を移す。
つられるように中也も箱を見た。
箱にはご丁寧に
『生きること事態が億劫そうな黒の人』
『誰彼構わず喧嘩を始めそうな赤の人』
と明記してあった。
「「……。」」
ジーっと見詰めること一分弱。
諦めたのか、
太宰は自分の事を現しているのだろう『生きること事態が億劫そうな黒の人』と書かれた箱に向かって手を伸ばした。
カパッと音を立てて箱を開け、中の服を取り出し、掲げる。
「「………。」」
その服を再びジーっと見詰めること一分弱。
太宰は無言で次々と箱の中のモノを取り出す。
それに続くように中也も『誰彼構わず喧嘩を始めそうな赤の人』と書かれた箱を開ける。
スーツジャケット、ブラウス、ベスト、ネクタイ、スーツズボンの衣類をはじめ、ポケットチーフ、ベルト、タイピン、カフス、腕時計に靴の装飾品に至る凡てを箱の中から取り出して着用した時の状態が分かるように床に並べた。
「「……。」」
凡てを並べ終わり、お互いの顔を見詰めること一分弱。
床に並べられた服を見詰めること一分弱。
そして
「………悪くないね」
「………悪くねェな」
2つの声が綺麗に重なった。