第1章 出会い
四方を壁に囲まれた広い部屋。
部屋に合う、広い仕事机に着席している男が机を挟んで立っている二人と話している。
「それで?そのパーティーに潜入して密売組織の人間を生け捕りにすれば良いの?」
「理解が早くて助かるよ太宰君」
「おいっ!首領になんて口利いてやがんだっ!!」
ポートマフィア首領ーーー森鷗外
その人物が直々に任務を言い渡しているのは、最近ポートマフィアに加入した青年二人、太宰治と中原中也だった。
太宰は言葉遣いを咎める中也を無視して続ける。
「パーティーの趣旨と潜入方法は?」
「パーティーの趣旨は人事交流だ。潜入の方は心配要らない。主催者は私の旧くからの友人でね」
「………そうですか」
聞いた方であるのに面倒臭そうに云った太宰に苛つき、再び咎めようとした中也だが、森の言葉が始まった為、口を閉ざした。
「彼は主に宝石商を営んでいるんだけどね。服飾の方でも世界中で展開しているほど成功しているのだよ」
そう云い終わったタイミングで黒服を纏った男達が大きな箱を4つ持って入室してくる。
「そんな彼が新たにブランドを立ち上げたらしくてね。君達はそのモデルとして起用された子供、って設定だから」
「えぇー!?真逆、その箱って」
「うん。君達が着ていく服一式だよ」
「センスの悪い首領の友達の服でしょ!?嫌な予感しかしないんだけど!」
「おい、太宰っ!」
渡された箱を凡て受け取った中也が再び咎める。
が、今度ばかりは少し同意見なのか声が小さかった。
森の隣に立っている少女の服装をみればそうなるだろう。
襞が贅沢に……と云えば聴こえはいいが、襞だらけのドレスに自分達が着なければならない服も……と身構えてしまうのは仕方の無いことだろう。
「いやいや、彼はスーツを主としていてね。ドレスとかは今回立ち上げた新しいブランドで始める予定らしいから」
このドレスは彼の作品ではないと云われて少し安堵する中也だが、太宰は未だ警戒しているようであった。
「今回の資料だよ。よく目を通しておき給え」
手が空いている太宰が其れを受け取る。
そして、業とらしく溜め息を着いた。
「拝命しました」
そう云って早々に部屋から出ていく。
中也も一礼すると慌てて太宰の後を追ったのだった。