第1章 出会い
ーーー
パーティーが始まり、賑やかで楽しそうな雰囲気が会場を包んでいた。
「Mr.宝条!今宵はお招き有難うございます!」
「新作のブランドも是非愛用したいですわ!」
宝条氏は次から次に挨拶に来る客に笑顔で対応していた。
その横で笑顔を浮かべて立つ太宰と、少し視線を反らしながら立つ中也のことを誰もが誉めちぎる。
そんな事を約一時間ほど繰り返した頃だった。
「君は少し疲れたかな?」
「!」
宝条氏が客の対応を終えるか否かのところで突然、中也に話し掛ける。
ブンブンと首を横に振る中也をみて、くすりと笑う太宰。
「彼は言葉を交わせない分、何時も以上に気を張っていると思います」
「ごめんね」
「いえ、仕事ですから」
にっこりと笑って云う太宰の頭をポンポンと撫でる宝条氏。
「着こなしだけでなく気遣いまで!本当に優秀なモデルですね!!羨ましいですな!」
「そうでしょうとも。わが社自慢のモデルですよ」
と、自慢げに話すと宝条氏は中也の方を見た。
「紹介として一人は傍に居て欲しいから先に休憩しておいで。庭は池もあるし、周りに植えてある花が丁度見頃だよ」
そう告げられると中也は太宰の方を見る。
普段の太宰からは想像もつかないほどの笑顔を浮かべながら頷く太宰。
「私は後で良いからゆっくりしておいで」
ゾゾゾッ!!
悪寒が背中に走った事を面に出さないようにして頷くと中也はパーティー会場を後にした。