第1章 出会い
パーティー会場の入り口に着くとメイドやボーイが宝条氏を別室へと導いた。
それを見送って執事が二人の方を向く。
「スピーチが終わるまで控え室で待機しておいて下さいませ。その後の挨拶回りに同行してほしいとのこと。食事の方は少々我慢しておいて欲しい、と伝言を預かっております」
「判りました」
太宰が返事すると一礼してその場を去る、
かと思いきや中也に近付いて「ネクタイが曲がっております」と触れてきた。
「此れで大丈夫です」
「……。」
そう告げる執事にペコッと頭を下げる。
「タイピンの宝石は気に入っていただけましたかな?」
コクッ。
「貴重な石ゆえ大事にして下さい」
コクッ。
「……それでは私はこれで失礼します」
ペコッ。
中也が首を振るのをみてから執事は退室していった。
その扉を鋭い目で睨み付ける。
「………そういうこと、か」
閉まる扉の音に重なるように、太宰は小さく呟いた。