crazy for you.【進撃の巨人/ハンジ・ゾエ】
第3章 煤まみれの少女再び
「この子は身寄りがないみたいなんだ。
傷が治るまではここにいてもらう」
「うちの仕事は人助けか?
憲兵にでも引き渡せばいいだろう」
憲兵、それはダメだ。
自分が訓練兵団に所属していたことや
今までの盗みや生きるために
してきた悪事がバレてしまう。
正直、
兵士と関わりを持つこと自体が危ない。
アウラが口を開こうとした時、
ハンジが口を開いた。
「エルヴィンの許可は取ってある。
私が昼間のお礼をしたいんだ、いいだろ? 」
“ エルヴィン ”という言葉が出た途端、
黒髪は大人しくなった。
「勝手にしろ」
そう言うとその兵士は部屋から出ていく。
彼が羽織ったジャケットに大きく描かれた自由の翼にアウラは瞳を見開いた。
調査兵団の兵士だったのか。
ということは自分が今いるのは
調査兵団の兵舎だ。
しかし、調査兵団で“エルヴィン”と言えば間違いなく13代団長のエルヴィン・スミスだろう。
それを呼び捨てにするとは。
アウラは再度、
とんでもない人物に手を出してしまったのだと後悔した。
二人きりになった室内にハンジの溜息が響く。
「全く、頭が固いんだからなぁリヴァイは。
あ、彼はリヴァイって言うんだけど」
ハンジはアウラに顔を向ける。