第2章 腹筋
「情熱...ですか?」
「ああ。研究にかける探究心や情熱なんかが私のエンジンさ!それさえあれば、何日だって研究を続けられる。疲労なんて二の次さ」
そう明るく語るハンジの話を聞きながら、アルミンは何となく悟った。ハンジは普通の人間とは少し違う。勿論いい意味でだ。
変わった人物であることは周知の事実だが、その「変わった」というのは性格的な事のみを言うのではないだろう。体質的なことでも、常人の平均からは外れている。
「立体起動の為の最低限の筋力は勿論つけてる。だけどそれ以外にやっていることはないな...ごめんね、上手く答えが返せたらいいんだけど」
「い、いえ!そんなお気になさらないでください!面白いお話を伺えて楽しかったです。ありがとうございます」
アルミンはぺこりと頭を下げ、尊敬すべき存在であるハンジに敬意を示した。
「あ!そうだ、君の友人のミカサは屈強な身体の持ち主じゃないか!彼女にアドバイスをもらってみたらどうだい?」
「ミカサ、ですか?」
「そう!もし筋肉が付きにくいと悩んでいるならミカサに聞くのがいいと思うけどね。女性というのは生物学的にも男性より筋肉が付きにくいんだ。それでもミカサはしっかり鍛えられた体を持っているだろう?」
確かにそうだ、とアルミンは先程会ったミカサの姿を思い出した。顔だけ隠せば、腹部の割れ具合は男性かと間違えるほどに立派だった。
「普通のトレーニングのみでは、ああはならないよ。何かミカサ流のやり方があるんじゃないかな?一度聞いてみるといい!女性というハンデと、筋肉が付きにくいというアルミンのハンデは似てもいるしね」
ミカサは子供の頃から僕、ましてやエレンの一歩先を行く力を持っていたから、ハンデだとかそんなものは考えたこともなかった。だが勿論ミカサだって5歳のときからバキバキに割れていたわけではないだろう。
何かミカサなりの鍛え方があるなら是非教えてもらいたい、とアルミンは嬉々とした。
「ありがとうございますハンジさん!早速聞きに行ってきます」
「あぁ。じゃあまた、巨人の話でも熱く語ろうか!!」
そう言ってヒラッと手を振りながら、続く長い廊下をハンジは歩いていった。...大量の資料を抱えながら。
そしてアルミンはクルッと踵を返して、ミカサが向かったであろうエレンたちのトレーニング部屋へと歩を進めた。
