第2章 腹筋
「お疲れ様です。その山積みの紙は...研究資料ですか?」
ハンジの両手には高々と積み上げられた資料があった。それはハンジの顔が半分隠れるほどの量である。
「あぁそうそう!気になるものを倉庫から出していたら、こんな量になっちゃってさ」
ケロッと笑うハンジだが、研究部屋にはこの数十倍の紙が散乱しているのをアルミンは知っている。半分以上がゴミと化しているのだろうけど。
「研究のたびに毎回こんなに資料を読まれるんですか?」
「うーん、全部ではないけど、知りたいことと関係していれば必ず読むようにしているよ。どこかには絶対ヒントがあるからね」
なんてことないように言うが、常人には到底できないことである。休憩なんてもの入れずに次々知識を頭に入れ、それを素早く整理しながら熟考する。
類まれな集中力と知的好奇心を持つハンジだからこそ、成せることなのだろうとアルミンは思った。
「アルミンは訓練の帰りかい?」
「いえ、自主連の帰りです。トレーニングをしていて」
「へぇ、それは感心だね!」
効果があるかはわからないけど...と心の中で言葉をこぼした時、ふとアルミンの頭に疑問が浮かんだ。
__そう言えばハンジさんは長時間、いや数日に渡る研究を頻繁にしているけど、ぐったり疲れている様子は見たことがないな...。ハンジさんの補佐であるモブリットさん曰く、分隊長は食事も睡眠もまともに取らない、と言っていた気がする。
そんな状況でも研究を続けられるのは、体力が相当しっかりしているからじゃないだろうか。
見た目そこまでガッチリしているわけではないのに、長期間の研究を持続できる体力を持つハンジさん...。なにか特別な体力づくり方法があるのかもしれない。
「あの、ハンジさん。ハンジさんは何かトレーニングをされてますか?」
「トレーニング?」
アルミンのいきなりな質問に、キョトンとするハンジ。だがすぐに彼の質問の意図を理解して、笑いながら答えた。
「あははっ!やってないよ!アルミン、私にアドバイスを求めるのは間違ってる」
「え、どういうことですか...?」
いい答えを期待していたアルミンは呆気にとられた。
「私の場合ね、研究に対する情熱こそが研究を続ける体力のようなものなんだよ。つまらない執務だったら絶対続かないね!すぐくたびれるだろう。」