第2章 腹筋
「それにしてもよエレン、前よりも更に割れてきたんじゃねぇか?」
「ほんとか!」
「おう」
コニーの言葉にエレンは嬉しそうに笑った。立体起動の動きだけでも十分な運動にはなるが、それだけで腹は割れない。割る、と筋肉をつけるでは、また別の鍛え方をしなければいけないのだ。
それを先輩兵士から聞いたエレンは、就寝前や訓練後など、こつこつ時間を掛けて体を鍛えてきたのだ。そのかいがあった、と嬉しそうにしている。
「ジャンも結構いい具合になってきたんじゃないかな?」
アルミンの言葉に、ジャンは待ってましたとばかりにドヤ顔で話し始める。
「アルミン、俺は最近思うんだ。何においても継続っつーのが一番大事だってな。俺のこの腹筋も継続の賜物ってわけだ。分かるか?」
「あ、うん...」
「おい馬面...俺が最初に初めてお前が真似してきたんだろ。偉そうに言ってんじゃねぇ!」
「あぁん!?」
すぐに喧嘩を始める二人をアルミンが苦笑いしながら割って入り、どうどうと落ち着かせる。「犬猿の仲」とはこの二人のことを言うのだろう。
「おいお前ら、今度は俺がやるから数えててくれよな!」
今度はコニーが腕まくりをしながら寝転び、筋トレをする姿勢に入った。
コニーもコニーでなかなかに頑張っている。飽きっぽそうな彼だが、今回は珍しく続いている。目に見える効果があるからだろうか。
一緒になって筋トレに励む3人を見ながら、アルミンは一人、そっと服越しに自分の腹を触った。
.....薄い。
3人に触発されてアルミンも鍛えようと頑張っているのだが、なかなか腹筋がつかないのだ。別に脂肪がどうとかいう話ではない、ただ単に筋肉がつきにくい。やはり男としてはがっちり割れた腹に憧れるものだが、自分の腹はぺったんこである。
なんだか情けない。
「ん?おい、どうしたよアルミン。暗い顔して」
トレーニング中のエレンが露骨に暗いアルミンに気づいた。その声にちらとエレンを見ると、よく割れた腹筋が目に入る。それでまた惨めな思いになり、無理やり笑顔を作った。
「あ、あぁ...ちょっと疲れたから僕はこの辺にするよ。みんな...頑張ってね」
「おう...」
3人に背を向けたアルミンは、ガチャリとドアを開け部屋から一人出ていった。