第1章 ○ 猫遊戯*太宰治
「い、いえ!そんなことは!」
「なら、今、着て見せてくれるかい?」
「今ですか!?」
「うん、今すぐ見たい。」
極上の笑顔で私を見つめながら、ワンピースを差し出してくる太宰さん。
そんな彼を私が断れる筈がなかった。
「…分かりました、向こうで着替えてきます。」
「やったぁ!じゃあ、これどーぞ。」
「ありがとうございます…。」
服を受け取り、部屋を出て行こうとすると
「あー!ちょっと待って!」
と呼び止められる。
何ですか?と振り向くと、太宰さんがこちらに近づいてくる。
「これも忘れずにね。」
太宰さんから渡されたものは、猫の耳の形をしたカチューシャ。
「いや、これは流石に…。」
「楽しみにしてるからね?」
「…はい。」
結局、太宰さんには逆らえず、カチューシャとワンピースを持って部屋を出て行くことになった。