第23章 俺、言わなかったか?
問題となった日のことを、陣平ちゃんの口から聞いた
「そもそも断りきれなかった陣平ちゃんが悪い…」
「わかってる…」
「俺、言ったよね?
泣かしたら全力で奪うって…」
「あぁ…」
あーぁ、泣きそうになっちゃって…そんな顔するくらいなら、しっかり繋ぎ止めておいて欲しい
「どうするの?俺がちゃんに好きって言ったら…」
「嫌だ」
「ふぅ…もうほんと世話がやける
ちゃんが会いたくないって言ったら、ほんと奪っちゃうからな」
スマホを取り出して、ちゃんに電話をかけると、話し合いたいと返事が返ってきた
「迎えに行くから待ってて…」
「わかった…」
しょぼくれているこの男を引きずって自分の家に帰る
「下で陣平ちゃん待ってるから、行っておいで
情けない顔してるけどな」
「研ちゃん、ありがとう」
はぁ…
ここで「行くな…俺にしとけ」と言えたら良かったのに…
ポンポンと頭を撫でるしか出来なくて、エレベーターまでちゃんを見送った
陣平ちゃんも好きだし、ちゃんの事も好きだ
やっぱり2人には笑顔でいて欲しい
俺の入り込む隙間なんて微塵もないことはわかってる
俺にはちゃんを拭ってあげる事は出来ても、止めてあげられない
心からの笑顔を引き出して上げることができるのは陣平ちゃんだけだ
ガランとした部屋
さっきまで彼女がいた痕跡を見つめて、切ない気持ちになった