第23章 俺、言わなかったか?
「ちゃん?!」
雨が降り出したのに、傘もささずとぼとぼ歩いているちゃんを見かけた
「ねぇ、聞こえてる?」
声をかけたのに、聞こえていない彼女の肩を掴んだ
「どうしちゃったのさ、そんなに泣いて…」
「研ちゃ…」
俺の顔を見るなり、わぁっと泣き出してしまった
「ちょっと、ほんとにどうしたの?」
濡れている彼女を、我が家に連れていき着替えを渡す
「お風呂入っておいで、ちょっとは落ち着くだろうし…」
彼女がお風呂に入っている間に、陣平ちゃんに電話をした
慌てた様子で電話に出て、ちゃんがうちにいることを伝えた
「そっか…見つけてくれて助かった…」
「泣かすなって、言わなかったか?」
「そう、だよな…ほんと情けない…」
「ま、理由聞いて、送り届けるから、心配すんな」
電話を終えてしばらくすると泣き止んだちゃんが出てきた
「紅茶でいい?」
「うん、ありがとう…」
何があったのか聞いても何でもないって、話してくれない
「何があったのか、話してくれなきゃ…このまま帰せないよ…」
「帰りたくない…帰れない…」
きっと陣平ちゃん絡みなんだろうな…
ここまで、取り乱すなんて余程のことがあったのだろう
また、泣き出してしまいそうな彼女を腕の中に閉じ込めて、背中をさする
「陣平ちゃんと喧嘩でもした?」
陣平ちゃんの名前を出したら、溜め込んでいたものを全部吐き出してくれた
「うそ、だろ…陣平ちゃんが?」
「陣平が、他の女に触れたと思うと…耐えられない…ぐちゃぐちゃになって、その場にいられなかった…」
「ちゃん、ここにいて
陣平ちゃんと話してくる…好きなように寛いでていいから」
許せなかった…きっと何かあったのかもしれない…
それでもちゃんをあんなに泣かせたって事実が許せなかった
陣平ちゃんの家のインターフォンを鳴らすと家主が飛び出してきた
「は?」
「帰れないって」
1人で来た俺にあからさまにしょんぼりする
「一発殴らせてくれない?」
言い終わる前に、彼の顔を殴った
避けられたはずなのに、避けなかった…
「が許してくれるなら…何発でも殴られる…」
「ばーか、今はまだ無理だ…混乱してる」
「クソっ…」