第14章 俺は帰らない方がいいのかな
「開けていい?」
「大したもんじゃねぇぞ、何がいいか全然わからなかったし」
ぶっきらぼうな言い方になってしまってちょっと後悔
こういう時、萩原や諸伏ならもうちょっと気の利いた言葉を選びそうだなと思った
「わぁ、かわいい、ありがとう」
は出勤する時いつも髪を纏めている
この前、クリップが音を立てて割れてしまっていたので、バナナクリップというやつをプレゼントした
「ちょっと貸して」
いつもが纏めているようにひとつに束ねてクルクルと捻りあげてクリップで留めた
鏡を出してチェックしている
「陣平って本当に器用だよね、自分でやるより綺麗に出来てる」
「まぁ一応爆弾処理班のエースって呼ばれてたりもしたからな」
「ありがとう、こんなかわいいのくれて本当に嬉しい」
久しぶりに見たの笑顔だった
ダメだ…
の笑顔に殺られた…
テーブルに突っ伏して赤くなった顔を隠す
顔を横に向けてチラリとを盗み見るとどうしたの?と顔を覗き込んでくる
酒に酔って少し赤くなった顔
服から覗く肩、綺麗な鎖骨、ほんのり香るの匂い
ボソボソと喋ったら、なに?聞こえなかったとが近づいてきた
手を伸ばしての頭を捕まえた
「今日、帰りたくないんだけどお前はどうだ?」
が息を呑むのもわかったくらい近い距離
「陣平と一緒にいたい」
早急にの肩を掴みバーを出て人気のない所まで来た
「もう一度聞く、お前はどうしたい?」
両肩に手を置き目線を合わせるために体を折る
「陣平と一緒にいたい」
「お前が俺の事を好きになるまで抱かないって言ったよな?帰りたくないって意味わかってるか?お前を抱きたいって言ってんだぞ」
「わかってるよ…」
「じゃ、それってつまり…」
「そうだよ、陣平が好き
今日だって、連絡きて誘ってくれて嬉しかったし
2人で出かけられるって舞い上がってたし、やっぱり楽しかったしずっとドキドキしっぱなしで…
プレゼントまで用意してくれちゃって…
でも、好きって、なかなか言えなかった…」
最後の方には泣き出してしまっていた
「泣くなよ…」
の頬に手を添えて親指の腹で涙を拭う
俺の手に重ねられたの手は少し震えていた