第9章 最後までしてないから
ん?と思い出す努力をしてみたもののなかなか思い出せなかった
ほら、とヒロさんは語り始めた
何年か前、陣平と研ちゃんと3人で飲みに行ってた時に私が乱入したそうだ
あー、確か一度そんなことがあったな…
あの時も彼氏に振られて陣平に泣きついたんだ
陣平は一人席を移動して私の話を聞いてくれてたっけ
陣平はいつもそうだ
黙って私の話を聞いてくれる
そんな優しい一面もあったのだ
仲直りしたいな…
ヒロさんの顔を見ていたら思い出した
「あ、ヒロさんあの時はお髭なかったですよね?」
「あーそうだよ」
「ヒロはね、ハギに童顔だから髭でも生やしたらって言われて生やし始めたんだ」
「ちげーよ、俺の兄さんに憧れてたからどの道生やすつもりだったんだっ!」
「ゼロだって、松田にあんなこと言わなきゃあいつあんなにガラ悪く思われる事もなかっただろうに」
「あんなこと?」
「松田も割と童顔だろ?それをコイツに指摘されてサングラスかけ始めたの、コイツもたいがいベビーフェイスなのにな」
安室さんとヒロさんのやり取りが面白すぎてお腹を抱えて笑ってしまった
それをみて2人も笑っている
笑いすぎて涙が出てきたヒロさんは指で涙を拭ってから
「思い出してくれて良かったよ
あの時も泣いてたよね?今日は誰に泣かされたの?」
という
隣に座っていたヒロさんが私の目尻に触れた
「まぁ、その辺にしてさん、シャワーでも浴びてきたら?適当に使ってもらっていいから」
安室さんの助け舟でその場を離れることができたけど陣平に泣かされましたなんて言えないし
安室さんの服とベッドまで借りてしまってその日は疲れもあってかすぐに眠りにつけた