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~miss you~

第9章 最後までしてないから




「あれ、あなたは…さん?」
呼び止められ顔をあげるとポアロの安室さんが立っていた

「こんばんは」

「こんばんは、おひとりでどうされたんですか?
もう遅い時間ですし、一人歩きは危ないですよ」

「これから、帰る所なんです
じゃ私はこれで、またポアロにお邪魔しますね」
安室さんに背を向けて歩き始めた

「待ってください」
回り込んできた安室さんの腕に通せんぼをされた

「なにか悩み事でもあるんですか?なにか様子が変ですね」
この人は全てを見透かしているように微笑んでいる

「原因は松田と萩原、あの2人のでしょう」
「べ、別に…そんなこと…」

ブルーがかった瞳に見つめられていたら、目の奥がツンと痛くなる
じわっと涙が溢れてくるのを止められなかった
急いで目を擦って涙をなかったことにしたかった
「すみません、泣かせるつもりはなかったんです…」
ふわっと包み込まれてびっくりした
陣平でも研ちゃんでもない男の人、2人から香るタバコの匂いもしない

「こうしてれば、泣き顔は見えませんから、溜まってるもの全部吐き出してしまった方がいいですよ」

「安室さん、ありがとうございます
びっくりして涙は引っ込んじゃいましたから、もう離してくださって大丈夫です」

「おや、それは残念ですね
もう少し抱きしめてられると思ったのですが…」

体を離して笑い合っていると
「お前ら…」と陣平の声がした

ズンズン進んできて安室さんから引き剥がされる

「いたっ…」
陣平に掴まれた手首がギリギリと痛かった

「女性を乱暴に扱うなんて関心しませんね
痛がっているでしょう、離してください」

「お前に言われる筋合いはねぇよ」

「陣平、痛い…」

「携帯の電源切ってるは、なかなか帰ってこねぇは
何考えてんだお前は」

深いため息と共に睨まれてしまう

「陣平は私のこと嫌いなんでしょ?ずっとイライラしてるし昨日もムカつくって…」

気づけば止まったはずの涙がまた出てきた

「それはお前が誰かれ構わず触らせるから」
「人聞きの悪いこと言わないでよ、人を節操なしみたいに
それを言うなら陣平だって…」
と、ここまで言いかけた所でここが道端で安室さんもいるということに気がついた
頭に手が置かれポンポンとしてくれる
手の主を見あげれば安室さんだった

「そんなこと言われたんですか?」


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