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リンゴ

第8章 誠凛vs秀徳








さやと笠松はそっと離れると

どちらかともなく笑い合った。


(幸せ…っつか
なんか色々とやべぇな)



「あ、涼太。連絡しないと」


「そうだな…
途中から完全に忘れてたわ」



ふいに黄瀬のあの苦しそうな顔が思い浮かぶ


キスしたり抱き締めてしまった罪悪感が

ざわざわと胸の奥を揺らす



(まだちゃんと好きかどうかなんてわかんねぇ

でも
泣いてるさやの傍にも居られないような奴に
渡す気はなくなっちまったな…)



笠松は傘をさす手をぎゅと握り締めると
そう思い直した。



「近くのお好み焼き屋さんにいるみたいですね
行きましょうか」


「おう。」







お好み焼き屋に着くと
黄瀬は少し寂しそうな顔でお好み焼きをつついていた。



「ごめんなさい。お待たせ」


「さやっち…もう大丈夫なんすか?」


「ええ。いい先輩ね涼太」



ふわりと笑うさやに黄瀬は
一瞬顔を歪める


きっと笠松先輩の前で泣いたんだ

俺には何も、出来ないのに…



黄瀬は精一杯笑ってさやを見つめた
笑わなきゃと思った。


顔を歪めたのは、さやの方だった。


徐々に泣きそうな顔になっていき

耐えきれなくなったさやは黄瀬の胸に飛び込んだ


突然の事に少しよろける黄瀬は
それでもしっかりさやを受け止めた



「涼太、本当にごめんなさい
あなたの前で…弱い所見せられなくて…

でももし…次私が辛く、なったら…
今度はっ…涼太が私を追いかけてくれる…?」


「さやっち…いいんすか…?
俺が、追いかけても…」


「あなたが好きだもの
あなたの前でも私は、私で居たいわ」



きっと無理だろう と黄瀬もさやもわかっていた。

それでもその気持ちが嬉しくて
黄瀬はぎゅうっとさやを抱き締めた






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