第8章 誠凛vs秀徳
さやは震えながら俺にしがみついた。
ちいせぇ体がぎゅと縮まって
背中に捕まる手が痛いくらい握り締めて
まだ泣くのを耐えている
「わ、私…きっと、笠松さんに
甘えるように…なっちゃいます」
「あ?んなもん気にすんな」
「ひっく…すぐ電話したり…
会いに行ったりぃっ…しちゃいますっ…」
「…さやなら構わねぇよ」
抱き締める腕に力が籠る
1人でしか泣けないこいつを
めいっぱい甘やかして
俺の腕の中で泣かせてやりたいと思った
さやは徐々に涙をこぼしていった
シャツが濡れて涙が温かい
「笠松さぁんっ…っぁ…ふぇっ
ぅぅっ…っ…!あぁあ…!!」
*
さやは少しだけ泣くと
握り締めていた力をゆっくりと抜いて
笠松を見上げた
その顔はもうさっきまでの悲痛な笑みじゃない
黄瀬と笑い合っていたような
柔らかい笑顔だった。
「…綺麗、だな」
「…え?」
「っわりぃ!俺いつまでこんなっ」
今更抱き締めている事を思い出した笠松は
カァッと顔を赤くして離れようとした
するとさやが腕に力を入れ、離さない
「な、なんだよ…」
「笠松さん…
キスして、いいですか…?」
上目遣いでそう言うさやに
もっともっと顔が赤くなる笠松
言葉が出ない
パクパクと口だけが動き、頭が回らなかった
(き、き、キス!?
何言ってんだコイツっ…!!
ゴクッ…か、覚悟決めろ笠松…!
さっき甘やかすって決めたろーがっ
据え膳食わぬは男の恥…!!)
とりあえず傘を拾って
さやを濡れないようにした笠松は
あわあわしながらもぎゅと目を瞑った。
「い、い、い、いいぞ。来いっ!」
「ふふっ…嫌なら跳ね除けてください」
さやは笠松の頬を両手で包み込むと
そっと自分の方へ引き、唇を合わせた