第8章 誠凛vs秀徳
ザーザーと雨が降っている
さやは傘もささず
雨にうたれながら歩いていた。
なにがそんなに悲しいのかわからなかった
緑間の悔しさが伝わったのかもしれないし
自分の信じていたものが
崩れ始めたのが、怖かったのかもしれない
(キセキの世代…
彼らなら私を倒せると思っていた
それだけ大我が強いって事かもしれないけど
あんなっ…ぽっと出の奴にっ…!)
自分の気持ちがぐらぐらと揺れている
何が何だかわからず
とめどなく涙が溢れた
「さやっ!
バカっ!お前なにしてんだ!」
「か、さまつさん…」
バシャバシャと水を弾きながら
傘をもった笠松がさやに駆け寄った。
見られたくない
泣いているところなんか
"女帝"紅林は ----- 泣かない 。
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笠松side
「なんで…来たんですか…」
さやは苦しそうに痛みを耐えるように、笑った。
雨に全身濡れて、体なんか震えて…
それでも泣き顔を見せないように
ひでぇ笑い方だ
こんなの笑ってる内に入るかよ…
だから黄瀬はさやを追わなかったんだな
こんなきっつい顔させねぇように
「…風邪、ひくぞ」
「…大丈夫です
涼太のとこ、戻ってください…」
俯くさや
どんどん雨粒は大きくなり
艶やかな髪を中まで濡らしていく
こっちまでキツくなってるような顔して
こんな状態のお前を放って帰れって?
「そんな事…出来る訳ねぇだろ」
笠松は傘をほおり投げさやを抱き締めた。
雨が笠松の肩を濡らす
「っやめて、ください…
敦…敦じゃ、なきゃ…」
「もう黙れ…
誰の前だって、泣いていいんだよ」
「そんな、…そんな簡単には…っ…」
「泣けよ
全部吐き出しちまえ
辛いってしんどいって…言っていいんだぜお前も」
「かさ、まつさっ…っっ…!」