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リンゴ

第6章 紫原敦







「なあ、いまどこにおんのや」


「もちろん教室ですよ」


「教室やな!?絶対そこ動くんやないで!」




ブチッと一方的に切られた電話に
顔をしかめるさや

林がどうしたの?と声をかけてくるが
答えようとした次の瞬間


ガラガラ バンッ ------------


大きな音をたてて教室のドアが乱暴に開かれ
汗だくの今吉がはあはあ言いながらいた



「さやっ!ちょっときぃや!」


「翔一さん…まったく」


「あーいつもの先輩か。大変だな紅林も」



苦笑いの林に保健室行ったと
教師に伝えてもらう事にして

さやは今吉の元へ駆け寄った。



「翔一さん、俺に授業サボらせる気ですか?」


「…とりあえずほんまお願いやから
着いてきてーな」



切なげな顔でそう言う今吉に
仕方ないとさやは歩き出す。


ざわざわと周りが騒がしい。

いつもの事になるつつある光景だが
爽やかな笑みでのらりくらりと面倒事をかわす今吉が

1人の男の後輩に必死になっている


これでイケメンだから余計に注目の的だ。



「どこ行くんですか?」


「…2人でゆっくり話せるとこや」



キーンコーンカーンコーン


授業が始まるチャイムがなり
覗いていた生徒達も顔を引っ込めた

第3倉庫

そう書かれた教室につくと今吉は鍵を取り出し
そこを開け、さやを中にいれた



「ここは生徒会の備品が置いてあんねん
だから生徒会以外の奴は誰も近付かん」


「そうなんですか」



そういえば今吉は生徒会の役員だったのを思い出し
鍵を持っていた事も納得する。

今吉は後ろ手に鍵をかけると
ぎゅっとさやを抱き締めた。



「さや…ほんま今までなにしとったんや」


「敦の所にいました。
翔一、寂しかった?」


「っ…!寂しかった、わ…」



2日ばかり会えなかっただけなのに
随分会っていないような感覚に陥る

この前抱き締めたばかりなのに

このぬくもりが恋しくて、恋しくて







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