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リンゴ

第5章 IH前






でもさー

俺だけに見せる紅ちん。

俺がさやちんって呼ぶと安心する紅ちん。


会いたいって縋られるの
きっと俺だけじゃーん? …そんなの喜ぶなってほーが

どうかしてるよねー



紫原はぽりぽりと頭をかきながら体を起こした。

机の方に目をやると、カレンダーに赤い丸印。



「あと1週間でそっち行くよー
待てるよねさやちん?」


「ぁっ….っ…」


「…いやいやしないでよー
だから陽泉おいでってー、言ったのにー」


「敦…敦…」


「んー?」



「もう一度…名前、呼んで…?」



泣きながらそう言う紅ちんに
ぎゅっと胸の奥が苦しくなる。


あーもう可愛いーなー

いつもの余裕はどうしちゃったのー



「さやちん、だーいすきー」


「うん…私もよ」


いつもめんどーだからしない電話だけど

俺を求めてる紅ちんとの電話は
なんでか全然めんどーじゃない


電話を切るとまたベットに横になった。

待ち受けの紅ちんと撮った
2人だけの写真を見る。


「紅ちん…早く会いたいなー」









あれから1日たって
さやはきちんと学校へ行き練習にも出ていた。


明らかに違う事と言えば



「さやー明日試合やねん
見に来てやー」


「嫌です。触らないでください」


「紅林っ!てめえなにサボってんだ!」


「若松先輩、寄らないでください」


「さや、今日の調子はどうですか?
これ、前に言っていたプレゼン」

「いりません。話しかけないでください。」



全員との接触を避けていた。

話しかける者話しかける者
言葉のボディブローをもらい、意気消沈

特に今吉、若松、原澤監督に対しての
冷徹さは群を抜いていた。



「(敦…会いたい…)」


「「「「(怖ーよ…)」」」」


完全にさやは紫原モードに入っていた。

その被害は桐皇部内だけに留まらず





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