第5章 IH前
アパートへ帰ると
物凄い罪悪感がどろどろと湧き出て
さやの心を締め付けた。
わかっている、いつもの事…。
そうすると決めたのは私なんだから
私が泣いちゃいけないのよ…。
自分に言い聞かせながら
なるべくいつも通りの顔をしてベットに入った。
帝光中が懐かしい…
いつもみんなが私の側にいて
苦しくもあったけど楽しい時もあった
いつの間にか皆を必要としてたのは、私の方だったみたい…
1粒の涙をぽろりと流すと
さやはそのまま眠りについてしまった。
---------------------
「ハッ!いい顔だなあ?さやちゃんよぉ」
「やめてっやめてっ…!」
「誰も助けになんてこねーよ!
愛しの____もなっ!」
「なーにしてんのー?」
------------------
「敦っ…!!」
飛び起きた先にはいつも通りの部屋
辺りはうっすらと白んでいた頃だった
冷や汗を大量にかいている
試合を見に行った服のままだ。
(夢っ…またあの夢…)
さやはたまらずスマホを手に電話をかけた。
プルプルプル ---------
「はい…なーに…ふあっ…」
「敦っ…敦っ…」
「…紅ちん、落ち着いてー…ふああ」
紫原は眠そうな声を出しながら
しっかり電話を取っていた。
朝の4時。紫原が起きるような時間じゃない
中学の時から
度々あった夜中のさやからの電話
悲痛な声で自分を呼ぶさやに
紫原は夜、さやの着信だけは
しっかりと出れるようにしていた。
「ああ…ふっ…私、私、」
「…さやちん」
「……敦!敦…!
いまどこなの?会いたい…!怖い…!」
「どこって秋田に決まってんじゃーん…
大丈夫だよーもうあいつはいないんだからー」
「だめなの…敦…会いたいの…」
わかってる
トラウマが原因で、会いたいんであって
俺の事好きでしょうがなくて会いたいんじゃないって