第5章 IH前
「高尾やめろ。さやはその名前が嫌いなのだよ」
さやの顔を覗き込む緑間
他の人らからみたら同じようにみえるが
緑間にはわかる。少し不機嫌だ。
緑間はさやの頬を撫でる
「すまないさや」
「…いいのよ真太郎。落ち着いたわ」
「ごめんっ!もうその話しない!」
手をパチンと合わせて頭を下げる高尾
どうしようか。
一番触れられたくない話だったとは言え
真太郎の友達だし、許してあげてもいい…。
さやはふとなにかを考える様な顔をすると
高尾の下げられた頭に手を伸ばした。
「さらさらね」
「っ…!?」
なにが起こっているんだ と
床しか見えない視界で高尾は困惑した。
真ちゃんの彼女が俺の頭を撫でている
そう気付いた時には
もうこの手が心地よく頭も上げるに上げられなくなっていた
「高尾くん、今日私を送って行って
それで許してあげる。」
「っ!さや!」
驚いた緑間がさやの方を振り向く
さやはなに?と言わんばかりの
表情で緑間を見つめ返す。
こうなっては、もう手がつけられない。
"今" さやが一緒に帰りたいのは
俺じゃなく、高尾なのだから。
「わかったのだよ…」
「いい子ね真太郎」
自分の関与しない所で
自分の帰りの予定が決められていく
高尾はその強引さに驚きつつも
うっすらと喜びを感じていた。
こんな綺麗な子に送って行ってって言われて
嫌な気持ちになれって方が無理だよなー
ビーー ----------
その時試合終了のブザーがなった。
誠凛はどうやら勝った様だった。
緑間は固まる様にコートを見つめている。
「えっと…真ちゃん?お前本当にそれでいいの?」
「…さやがそれを望むのだから
仕方の無い事なのだよ。」
「真太郎、またね」
「ああ…。」