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リンゴ

第5章 IH前






「は、はじめっまして…くっ…
真太郎、達の…彼女の…ふふっ」

「…さや?どうしたのだよ!?」

「えっ!?なに俺なんかしちゃったの真ちゃん!?」



何かを堪えるように途切れ途切れに話すさや

緑間も高尾も何事だと焦り
おろおろとさやの様子を伺っている



「あーもうだめー!
ふふっ!あははっ!」



さやは体をくの字に曲げ
笑う口を抑えてはいるが一向に収まらない。

ぷるぷると震えながら笑う姿は
緑間でもかなり久しぶりに見る大爆笑だった。



「真ちゃんっ!真太郎がっあははっ真ちゃん!」


ずっと聞こえていないフリをしていた

あの真面目でふざける事を知らない緑間が

チームメイトに真ちゃんなどと呼ばれているのを聞いたら
どうしても笑いが堪えきれなかった。


ヒーヒー言いながら笑うさやは
普段の大人っぽさや近寄り難さは消え、ただの女の子だった。



「…高尾、今日ばかりはお前を褒めてやるのだよ」

「ん!?…おお。
俺全然状況が掴めてないんだけど…。」



普段見ることが出来ないさやの満面の笑みに
それをさせた高尾に嫉妬を抱きつつ

どこか安心するような気持ちになった。








「改めまして、彼女の紅林さやです。」


ようやくさやが笑い終わったのは
試合が始まる頃だった。

緑間は試合を見つつさや達の話に耳を傾けている。



「高尾くんの話は真太郎から聞いていたわ
真太郎に構ってくれてありがと」

「いやいやー!とんでもない!
てかギャップすごっ…さっきと全然違うじゃん!」

「あんなに笑ったのは久しぶりよ
もう忘れて。」


ポーカーフェイスで話すさやに
戸惑いをかくせない高尾

綺麗な顔があんなに崩れて笑ったかと思えば
今度は大人の女の顔。



「(不思議な子だなー…
いいなーなんて凄く、思わなくもないけど
真ちゃんの彼女だし)」



「あ、紅林さや?って言ったら
女子バスケ、女帝の紅林!?」





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