第5章 IH前
「…なんなのだよその他人行儀な話し方は」
「真太郎?
ごめん、誰かわからずにでちゃったのよ」
電話の主は緑間だった。
さやは寝そべっていた体を起こし
スマホをきちんと耳にあてた。
「珍しいなお前でもそんな事があるのか」
「まあ…たまには、ね。
それでどうしたの?もしかして真太郎も今日試合?」
「いや…俺の試合は明日だ。
今日は黒子と外国人選手との試合でな」
「テツヤか…強く、なってるのかな」
黄瀬に勝った黒子。
黒子の新しい光はまだ鈍い光だが確実に輝いていた
光と影がキセキの世代に届くのか
「さあな。それはわからん
だが外国人選手と言うのは気になるのだよ
さや、一緒に見に行くのだよ」
「…いいわね。1番いい誘いだわ」
「…当然だ。
俺はいつでもさやの為に、人事を尽くしている。」
緑間と会場で落ち合う約束をし、電話を切った。
*
会場へ着くとすでに誠凛高校、新協高校共に
アップを始めていた所だった。
「さや、おそいのだよ」
声をかけられた方を向くと
似合わないサングラスをかけた緑間がいた。
「真太郎、ごめんね
一旦家に帰っていたのよ」
「!!よく俺だとわかったな。
やはり俺とさやは運命に繋がれているのだよ」
小さい声だったので
さやがきょろきょろと
自分を探すのを想像していた緑間は驚いた様に言った。
(あれ、これ驚いた方がよかったのかしら…
全然変装になっていないけど…)
緑間の天然ぶりに
柄にもなく気を使ってしまうさや
コートに目を落とすと、そろそろ試合が始まりそうだ。
「始まるのだよ」
「ええ、期待はしていないわ
でも私はテツヤを見られればそれでいい…」
「フンッ……」
気に入らないとばかりに黒子を睨みつける緑間だったが
そっとさやの手をとると
離さないように、離れてしまわない様に
強く握りしめた。