第5章 IH前
その日の練習は
異様な光景だったと一軍選手は言う
いつも以上にさやにベタつく今吉に
「(ますます惹かれてもうたわさや)」
悶えたり今吉を睨みつけたり落ち込んでみたりの若松
「(2人は恋人同士なのかっ!?
…!…くっつくんじゃねーよ今吉さん!
でも、恋人同士なら普通、なのか…)」
急に来たと思ったら女性誌"特集 女性が喜ぶプレゼント"を読みふけり
たまにさやに雑誌を見せる監督
「(さやは何が喜ぶのだろうか)」
「「「(今日はなんなんだ…)」」」
(うざい…)
当の本人は知らん顔で
いつも通りにバスケに打ち込みミニゲームをやりたがっていた。
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そして IH 予選当日 ---------
一軍が皆予選に出払ってしまったので
さやは暇を持て余していた。
二軍の練習に加わる様に言われていたが
青峰達が予選に出ているのに
自分だけ二軍体育館とは、どうにもやる気が出ない。
「(わかっていた事だわ)」
それでも二軍体育館にも行く気にはなれず
授業までサボり、空いた屋上で寝転んでいた。
ブブッ ブブッ --------
連続してLINEが送られてくる。
"今日お前試合か?
俺の試合見に来いよ。さつきじゃろくなもん作らねー"
"さやっちー!今日は予選初日っすよー!
今日試合じゃなかったら応援来て欲しいっす!"
「大輝と涼太か…」
2人からの誘いは嬉しい
でも、行く気にも返事を返す気にもなれなかった。
試合がしたい
キセキの世代…そう言われる彼らと
戦ったら、私は初めて負けるのかな と淡い期待を抱く
ぼーっとスマホを眺めていたせいか
押したままの指が勝手に着信を取っていた。
「(あー、しまった。)」
「もしもし」
「はい。」