第5章 IH前
「!へえー…(恋人達、ねえ…)」
「でもいい子の翔一に
ちょっとだけご褒美。」
さやは今吉を引き寄せると
頬に軽くキスをした。
にこりと笑うさやに顔を真っ赤にする今吉
(こんなんっ…!不意打ちやっ!)
慌てる今吉が可愛らしく
さやからくすくすと笑いが零れる。
「…誰かに見られたらどうすんねん
ワシらホモ確定やないか」
「その時は
翔一さんに無理矢理やらされたと言いますよ」
「おいっ!
ワシ完全にヒールやんけ!」
さやは抗議する今吉を置いて歩きだし
今吉はそれをすぐに追いかけていった。
そして、それを1人見ていた男がいた。
「え、ちょ…どういう事だ!?」
*
若松side
俺は授業が終わった所で
体育館に行こうと教室を出た
「あ、バッシュ忘れた…」
ロッカーに置いてあるバッシュは
昨日いい加減洗わなくちゃなんねーなと思い
家に持ち帰ったから
教室に忘れたあれがねーと困る
(ッチ…しゃーねー、取りに戻るか)
かなり来てしまった道のりを戻り
バッシュを手にまた体育館へ向かっていると
体育館へ繋がる渡り廊下で
仲良さそうに歩いている今吉さんと紅林を見つけた。
またか…。
と思った。
最近の今吉さんは紅林にべったりで
紅林のやる事なす事許しちまう傾向にある。
前に、紅林が無断で休んだ件も
最初は鬼の様にきれていた今吉さんも
結局ほだされちまって
今じゃこうだ。
「なにやってんだよ、あの人は」
2人は立ち止まったかと思うと
いきなり今吉さんが紅林の耳元に顔を寄せ
なにか囁いた。
え、?
まるで恋人同士みてーな雰囲気に
声をかけようと思っていた俺はおもわず立ち止まった。
紅林は
いつか見たあの笑みで、今吉さんに笑いかけた。
見てるだけのこっちまで
ぞくりとしてしまうあの笑顔を向けられている今吉さんに
(ッチ…胸糞わりぃ)
さっきまで確かに紅林にイラついていたはずなのに
そんな事思っていれば
紅林と今吉さんの顔が近付いて
ちゅっとリップ音をたて
紅林の唇が今吉さんの頬に触れた…。
「(えっ!?は!?)」
本当になにやってんだ、あの人は…!?