第4章 今吉翔一
「な、なんや」
「この事は、2人の秘密」
さやは今吉の唇にそっと指をあてると
わかった? と囁いた。
今吉はこくこくと頷く事しか出来ず
そそくさと逃げ帰った。
本来の目的も果たさぬまま
(あかんわこれ…
惚れるとかそんな次元やない…
あの目に…取り込まれる…)
飛び出したアパートの入り口で
ずるずると力なく座り込み
ぱんぱんに熱をもってしまった自身に呆れ返った。
「やっぱいいなあ翔一さん」
さやは自分の手に触れた時の
今吉の顔を思い出し、ふふっと笑った。
*
結局、家に戻ってしまったので
また学校に授業を受けに戻る気にもならず
ベットで転がっていた。
ブブッ --------
短くスマホが鳴り
だるそうに画面をみると
"敦"
と表示されていた
敦?
めずらしいこんな時間に連絡がくるなんて
メッセージを表示すると
"いまなにしてんのー?"
とだけ。
"ベットでごろごろしてるよ
敦、いま授業でしょう?"
よくわからない紫原に首を傾げながら
返信をするとすぐに着信音
表示は "敦"
「もしもし?」
「やっほー紅ちん
やっぱりサボってたねー」
「え?っああ、敦久しぶりね
どうして学校行ってないって、わかったの?」
「久しぶりー
んー…なんとなくー」
相変わらず呑気な声で話す紫原に
なんだかおかしな気持ちになってしまう。
なんとなくで
私がサボっているのがわかるなんて有り得ない。
「敦はなにしてるのよ
サボってちゃだめでしょ」
「紅ちんに言われたくないよそれ
紅ちんだってサボってんじゃんー」
「ふふっそうだったわね」
きっとどこかの空きスペースで
お菓子でも食べながらかけているいるのだろう
ガサガサぽりぽりと音が聞こえてくる。
(敦と話すのもなんか久しぶり…
いつも練習が終わってからLINEはきていたけど
敦は電話とかしたがる方じゃないし、)