第4章 今吉翔一
「悪いなあ、わざわざ」
「そう思うのなら初めから来ないでください」
ツンと冷たい態度をとるさやに苦笑いをこぼし
改めて部屋を眺める
ソファの前にはテレビが置いてあり
テレビの周りを囲うように棚が配置されている。
「(一々おっしゃれやなあ)」
棚には複数人で撮られた写真が上の方に飾ってあり
横の棚には
色々なものが置いてあったが
どれも大切にしている事が伝わるぐらい
綺麗に置かれている。
指輪の箱
ネックレス掛けにひとつだけかけられたネックレス
華奢なブレスレット
ピンク色の香水の小瓶
「(なんやこれ
これ、本当に男物かいな…?)」
今吉はそっと香水を手にとる
綺麗なガラスせいのキャップを外し
そっと鼻を近付ける。
甘くてクラクラするような
なんとも言えない薔薇の香りがした。
「翔一さんそれに触らないでください」
グラスに注がれたコーラをテーブルに置くと
さやは今吉の手からそっと小瓶をぬきとり
愛おしそうに見つめた後
綺麗に元の棚に戻した。
「あれは自分のか?」
「…違いますよ
恋人のものです。」
「へえ、じゃあこの辺のもの全部そうなん?」
「ええ、まあ。」
「随分忘れ物の多い彼女さんやなあ」
腹黒い笑みを浮かべながら
棚の前で腕を組みさやを見つめる今吉
さやは1口コーラを飲むと
今吉に目だけで座れと促す
やれやれと言った表情でさやの隣に腰を下ろす。
「コップ、向かいに置いたんですけど」
「ええやん別に
こっちの方が近くて」
今吉は向かいに置かれたコップに手を伸ばし
自分の方に引き寄せる。
無表情を突き通すさやが
いま何を考えてんのかと思うと
ぞくりとするわほんま
なあ、これ
恋人のなんかじゃないやろ
恋人から貰った、もん
そうやろ?さや…