第13章 試合と青峰大輝
「遊ぶって…てめっ…」
妖しく笑うさやに、火神は言葉が続かない
他の誠凛選手にしたって同じだ
誰もさやから目を離せない
ブーッ
大きなブザーが鳴り響き
第1クオーターが終了した事を知らせる
両選手とも自陣のベンチへ戻っていく
「ナイスシュートさや」
「どうでもいいわ
次、若松借りるわね」
「はっ…もうかいな」
「ええ
やるならとことん、楽しくなくっちゃ」
にこりと笑うさやに
今吉はドキッとした
その笑みに一体どれだけの人が
目を奪われているか知っているのだろうか
(いやこいつは自覚しとる
…尚更タチ悪いわっ…)
ベンチに座り
マネージャーからドリンクを受け取るさや
そのマネージャーさえも頬を染め
陶酔していた
「第1クオーターまずまずですね
このまま行きます
さや、遊んでもいいですが
点は取りなさい」
「取ってるでしょ
私に意見するのは、やめなさい」
高圧的な態度でじろりと睨みつける
大きな目が鋭く細められ
笑みが消える
美人が怒ると怖いと言うが
プライドをもねじ伏せられる、強い眼光
原澤はゴクリと唾を飲み込んだ
「っ…!…すまない」
「紅林てめぇ!監督に何て口聞いてんだ!」
「若松やめい。
さやのクラッチタイムなん慣れとるやろ」
「いい、翔一
若松は今だけ特別よ
次、あれをやるわ。わかったわね?」
さやに詰め寄る若松を
制止する今吉
他の部員だったら激怒しそうなものの
さらりと受け流した
若松はわなわなと怒りに震えながらも
「ッチ…わかったよ!」とだけ言い
乱暴にベンチに腰掛ける
監督は若松が大人しくなったのを見守ると
選手全員に向き合った
「…今のさやを見てれば
薄々気付く事もあるでしょう
でもそれについて話すのは終わってからです
女性だろうと男性だろうと
青峰がいない今、エースはさや
勝ちなさい、全てを使って」