第12章 黒子テツヤと試合
さやはそう告げると
颯爽と桐皇ベンチへ歩いて行った
その目に迷いなんてなく
黒子はその背中を見つめながら
無意識に拳を握り締めいた
「お、おい黒子どうなってんだ
なんでさやが桐皇に…?」
「…すいません
僕にも分かりません
ですが、この試合厳しいものになりそうです」
駆け寄る日向達に黒子はそう返した
日向はちらりとさやを見つめた
自分の好きな相手が
何故か敵チームにいて
"誠凛は俺が潰す"
そうとまで言われた
(俺は、ちゃんと試合が出来るのだろうか…)
ちくりと胸にトゲが刺さる
それでも、やるしかないんだ…
「さやさんは強いです
青峰くんに引けを取らないくらいには
彼女に遊ばれて
自信をなくし辞めていった選手も少なくはないです」
「遊ばれてって…!」
火神が驚いて黒子を見ると
黒子は苦い顔をしてただ握り締めた拳を見つめていた
黒子が今どんな気持ちか
バカな俺でも簡単に分かる
苦しい。戦いたくない。
負けたくない。勝ちたい。でも…!
パンパンッ
大きく手を叩く音がして
ハッとした黒子達は音のした方へ振り返る
「しっかりしなさい!
たとえさやちゃんが相手でも
私達のする事は1つ!
勝つ、それだけよ!
男と女の違いを見せてやりなさい!」
「「「…っおう!」」」
リコの言葉に気合いを入れ直した誠凛は
迷いを振り切るように
整列の為コート中央へ向かっていく
「いいんですか監督
大会関係者に言えば、不戦勝に出来ます」
「…いいのよ
折角、付け入る隙をくれたんだから
青峰くんが来る前に点差をつけてやりましょう!
それに…
そんな事望んでいる訳じゃない、でしょ?」
「はい…
すいません…」
またぐっと拳を握り締めた黒子を見て
リコはその背中をバシンッと叩いた
私達は勝つのよ!
女帝紅林もキセキの世代も超えて…!
「行ってこい!」
「っはい!」