第12章 黒子テツヤと試合
さやに掴みかかる若松の腕を
今吉がギリギリと握り締め、離すように促す
若松は今吉が割って入ってきた事に
目を丸くしながら驚き、手を離した
「ゴホッ…翔一さんありがとうございます」
「すいません主将…」
「ええて、…そんな事より
さやどういうこっちゃ今の言い方
まるで青峰と朝まで一緒におったよーに聞こえるわ」
顔には出さないが嫉妬で焼き尽くされそうな程
今吉は怒り狂っていた
前にも青峰を知っている風な様子は見た事がある
でもこんな親しげに"大輝"なんて呼ぶ事は
今まで1度もなかったのに
さやを睨みつける今吉に
さやはふっと笑った
「俺に何かを聞きたいのなら
大輝より、俺に貢献して下さい
点を取れとは言わない
俺が気持ちよくなれるよう頑張って下さい」
さやの声が妖艶に響く
最早、頭にはその言葉しか入らなかった
先程まで嫉妬で怒り狂っていたはず心の中は
さやの声が 毒の様に
ぐるぐると渦巻き
全てを塗り替えていく
今吉は吸い込まれそうなさやの瞳を見つめ
顔を赤くしながら、困った顔で笑った
「っ…参ったわ」
「さすが主将。話が早くて助かります」
「っくそ…なんだこの感じ」
当てられた若松が顔を赤くして
その場でへたりこむ
離れた所で聞いていた他の部員や監督も
その例に漏れずさやに支配され
恍惚の表情でさやを見つめていた
ガチャ ------
その異様な空気を遮るように控え室の扉が開けられた
「遅くなりましたー!
青峰くん後半には間に合うそうで…ってあれ?
皆さんどうしたんですか?」
「大丈夫だよ桃井
さあ行こう。アップの時間だ」
へたりこむ若松に
桃井から目を離さず手を差し出した
さやの色気に当てられたままの若松は
大人しくその手をとり立ち上がった