第12章 黒子テツヤと試合
「珍しいやん
さやが公式戦に出るやなんて」
「まあ大輝が来るまでのつなぎですよ
いいですよね、監督」
ポーカーフェイスは崩さずに
さやに近寄る今吉
さやが女だと知っている今吉は
女だから公式戦に出られないのだとそう理解していた
それがいきなりこれだ
訳が分からない
さやの表情から少しでも
思惑を読み取ろうと近付いたつもりだったが
相も変わらず妖艶な笑みで笑うさやからは
何も感じられない
あるのはメラメラと燃えたぎる
興奮、興味、圧
さやは今吉の事も気にせず
その笑みを向け、監督を見た
監督は渋い顔をしながら
さやを見返す
有無を言わさぬ空気
青峰がいない今ここでさやが入るのが
1番勝利に近い
それがさやの思惑通りだとしても
勝率が高い方を選ぶ
私にとってもチームにとっても最善
「…合宿には出られないかも知れませんよ」
「んー…まあ構いません」
「そう、ですか
なら仕方ありません。交代です
SF紅林で行きます」
それが当たり前だとばかりにさやは
監督の返答を聞くとすぐ適当なロッカーを漁りだした
監督の指示を聞いた諏佐はさやに近寄り
「頼むな」と声をかけポンっと頭に手を置いた
一連の流れを、許せないのが若松だ
イライラした表情を隠しもせずさやに近寄っていく
「紅林てめぇ出るなら出るで
もっと早く来いよ!
しかも今日朝練もサボりやがって…!
そんなんで試合だけ出させて下さいなんて
俺は認めねえぞ!」
「それは大輝に文句言って下さいよ
俺だって朝練行きたかったんですから」
「……なんでそこで青峰が出るんや」