第12章 黒子テツヤと試合
それからさやは黒子と別れ
桐皇学園に戻っていた
最後に交わした黒子との会話を思い出しながら
*
「聞いてください」
「ん…?」
「さやさんが強い事にこだわっているのは
"女帝紅林" の期待に応える為…ですよね」
「……。」
「当時僕はさやさんの傍にいなかった
だから何があったのかはわかりません
何故そんな風に笑うのかも
青峰くん達が言ってました
ある事がある前
虹村さんと付き合っていた頃のさやさんは
いつも幸せそうだったと」
「っ……」
「今まで言えませんでした…けど
僕は僕の力で貴女を幸せだった貴女に戻したい
変えてみせます
皆も、貴女も」
*
黒子とは長いとは言えなくても
短くない付き合いのつもりだ
肌を触れ合い
同じ時間を過ごして来た
(いつからそう思っていたんだろう
そんな風に思っていたなんて気付かなかった
…認めたくなかっただけかも知れない…)
次はー、△△駅ー
窓の外の景色が緩やかに流れていく
もうすぐ最寄り駅だ
流れる景色を眺め、気持ちを落ち着かせていく
テツヤが何を言っても
それがどんなに確信に近い事だとしても
結局、強い事が全てなのよ
"女帝 紅林" がそれ以外を認める訳にはいかない
強いから勝つ
強いから私の手駒になれるのよ
ゆっくりと電車が駅に着く
ドアが開き、ちらほらと人が降りていく
さやも周りの人と同じ様に
ゆっくりと電車を降りた
…テツヤが本気で桐皇を倒しにくるのなら
私も覚悟を決めなくちゃいけない
最初で最後の力試しだ
さやは妖艶な笑みで笑うと
スマホを取り出しある番号に電話をかけた
「もしもし、大輝?
今何処にいるの?」