第11章 過去とプール練
桃井は嬉しそうな顔をしながら
また会う約束をしてプールを去って行った
黒子とさやは
2人でプールに足を浸けながらプールサイドに座った
「さやさん…
もし僕が青峰くんに勝ったら、どうしますか?」
「どうって…なに?」
足をぶらぶらさせながら黒子の顔を見つめる
黒子は少し寂しそうな顔をしていた
何、なんてわかっているのに
私には強い事が全てだから
負けた青峰をどうするのか、それを心配しているのだ
「…黄瀬くんと緑間くんは、元気ですか?」
「テツヤ、心配しなくても大丈夫よ
私はあの子達を特別に思ってるわ
もちろん、貴方の事も」
妖艶に笑うさや
その笑みは青峰の勝利を確信しているからなのか
黒子には自信に満ち溢れているように見えた
昔、さやはよく言っていた
"大輝が最強よ。
だから、あなたが負ける事は許さない"
その笑みが青峰を深く突き落としていくのを
知ってか知らずか、何度もそう口にした
勝ちたいような、勝ってはいけないような
苦い想いが胸の内を揺らしていく
「…もし、青峰くんに勝てたら
僕の気持ちをさやさんに伝えてもいいですか?」
「!…テツヤ」
初めて言葉にした
好きを匂わせるセリフ
いつだって僕らは近過ぎない距離を保っていて
踏み込めないのは
青峰くんの事や僕の恐怖心
さやは驚いたように目を見開いていた
決意を新たにさやを見る黒子には
いつもとは違う、何かがあった
顔は真っ赤なのに
男の顔をしている黒子に胸が熱くなる
「…ええ。待っているわいつまでも」
「すぐに貴女を僕のモノにしてみせますよ」
「っ…
どうしたのよ。なんだか、積極的ね」
ほんのり染まる頬を押さえながら
さやは黒子にそっと笑いかけた