第11章 過去とプール練
切なげな目でさやを見つめる黒子
桃井は黒子の様子を見てか
顔を歪ませた
中学時代からの恋心
叶わない事がわかっていても
それでも、諦めきれなくて
「(私がさやに勝てる筈もないのに、ね…
嫌になっちゃうなー
それでもさやは私の友達で
青峰くん達のバスケをやる意味だもの
ギリギリで引き止めてくれてるさやを
嫌いになんてなれないよ…)」
苦い心に体を痛ませながら、桃井はいつも通りを装う
さやが苦しめば
自分の想い人が誰よりも苦しむ事がわかっているから
「つか、さや俺には色々教えてくれる約束!
忘れたとは言わせねーぞ?」
「そうだっけ?
いつ私がそんな約束したのよ」
同中同士で触れられない雰囲気を放つ3人に
特に気にした様子もなく
さやを後ろから抱き締める火神
紫原に近い身長の火神が寄りかかると
懐かしい重さを感じるが、重い
「重いわよ。退いて」
「あ、わり
じゃなくて!ほら、テストの時だよ!」
「ああ…90点ってのかしら
むしろとれたの?あの悲惨な状況で?」
「……どうやったかは聞くな」
思い出したのかズーンと沈みながら
さやの肩に頭を乗せ項垂れる火神を
さやはよくわかっていないが
よしよしと髪を撫でておいた
なんとなくそうした方がいい気がしたからだ
「そんな約束をしていたんですか?
ずるいです、僕もさやさんをもっと知りたい」
「テツヤはこれ以上ないくらい私を知ってるじゃない」
「…やです。まだ足りません」
火神の頭を押しのけ、さやをぎゅうっと抱き締める黒子
さやの小さい頭を
手のひらで包み込みながら胸板に寄せ
吸い付く様な肌の腰を離さないと言わんばかりに
黒子の細腕で抱き締めた