第11章 過去とプール練
「(あれが全てのきっかけだった
1人でいるのが怖くなった私は、皆に逃げ
助けてくれなかった虹村さんから逃げた
そう言えば、テツヤに会ったのもその時だったな…)」
初めて黒子に会った時はそれどころじゃなくて
話すなんてなかった
虹村さん以外の人
青峰と付き合い出した頃に仲のいい黒子と
一緒にいる時間が増えて、話し始めた
テツヤはきっと私を恨んでいるだろう
皆を変えてしまったのは私なのだから
壊れそうなさやに勝利を
捧げ続けると決めたキセキの世代
さやと付き合いが深くなるほど
才能に目覚め
変わっていくチーム
虹村も黒子も被害者だ
「さや?…おーいさや?」
「あ、すいません
色々思い出しちゃって…」
気がつくとさやは体育館の入口で
ぼーっと突っ立っていた
今吉が心配そうにさやを見つめている
手を伸ばす、触れたい
過去を思い出したせいか今無性に怖くて
誰でもいいから抱き締めて欲しかった
「ちょ、さや?」
「翔一さん…」
今吉を引き寄せてその腕の中に飛び込む
大丈夫、ここにはアイツはいない
強く抱き締めて離さないで
「さやあかんって…
ここ体育館やでっ…!ほら若松が鬼の形相や」
「嫌…翔一さん」
「紅林ぃっ!今吉さんから離れろ!」
今吉から引き剥がされ若松に包まれる
後ろから抱き締められた腕は今吉よりもゴツゴツしていて
何故若松がこんな事をするのかと
後ろを振り返った
「え、若松先輩?」
「ッチ…さっさと着替えてこい」
真っ赤にした顔でさやを離す若松
何が何だかよくわからないまま
若松に押されるように更衣室へ入っていった
*
練習も終わり
いつも通り若松と今吉と居残り練をした後
2人と途中まで一緒に帰り
今吉に心配されつつも分かれ道で2人と別れた