第11章 過去とプール練
(虹村さんと付き合えてるなんて
幸せ過ぎて死にそうー)
ダムダムとボールを手に取りながら
シュートをする虹村を盗み見る
相変わらずかっこよくて素敵
-------この関係が崩れていくのは
ほんの少し後のことだった
その年の冬
さやは段々バスケットにやる気を感じなくなっていった
"女帝"と崇められ始め
さやを止められるひとがいなくなった女子バスケ
何をやっても当たり前
さすがとは言われても
点を取り仲間が喜ぶ事はもうない
練習は行く
それでも抜け出すようになり
抜け出した先は虹村がいる体育館
いつも暗い顔でじっと見つめていた
「虹村さんまーたアイツ来てますよ」
「ああ…後で言っとくわ」
隣でストレッチ中の青峰が
苦そうな顔で虹村にそう声をかけてきた
青峰にはそう言ったものの
ぶっちゃけさやになんて言っていいか、わからなかった
いつだろう
さやの幸せそうな、柔らかい笑顔を見たのは
さやはいつしか "女帝" に相応しい
妖しい笑みで笑うようになった
女帝と呼ばれ始める前は
キラキラと目を輝かせてバスケをしていたのに
今は興味もなさそうに
ただ勝つだけ。
青峰や、緑間とやってもさやは負けない
圧倒的な力の差を見せつけ妖しく笑う
負けないから、どんどん興味も意欲も失われていき
その反動でなのかさやは
以前にも増して虹村にべったりで
毎日毎日さやの家に行っては2人で過ごした
それでもさやは笑わなくて
「(どうしろってんだ…)」
さやが好きだ
その気持ちは偽りがないのに何も出来ない自分に腹が立つ
ちらりとさやの方に目を向けると
早くに終わらせた青峰がさやの元へ駆け寄っていた
2人はストリートで知り合い
前から仲が良かった
最近のさやの様子が気がかりで
練習に空きが出来ればさやの所で、仲良さげに話している