第11章 過去とプール練
さやはふと思い出したように
「翔一さんってモテますよね」
と言った。
今吉はぎょっとしてさやの顔を見ながら
どう答えたものかと思案した
確かに、モテなくはないわ
でもそんなん彼女に言うもんちゃうよな
さやはなんも気にしんそーやけど
どう言う意図で言ったのかわからず
ポーカーフェイスを見つめるが、何もわからない
「まあ、それなりや
でもさやみたいに他にはおらんよ?」
「嫌味のつもりですか?それ
翔一さんが他に行けない事くらいわかってますから」
「うわーなんかムカつくわ!
なあ…さやはなんでこんな風にする様になったん?」
ふいに真剣な表情でそう聞く今吉に、足が止まる
(なんで…こうなったか…
前は確かに私も一途で1人の人だけを愛していた
変わり始めたのは…)
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「にじーむらーさんっ」
「おわっ!さやいきなり来んなバカ!」
「いいでしょう別に!
愛しい彼氏の練習覗いてちゃ悪い?」
中学一年生。
小学校の時から勧めらるがままにバスケをやってきた
あの時はまだ周りと力の差もそんなになくて
ストリートに行っても男相手に勝つ事は
全くなかった
帝光中に入ってとにかくバスケが楽しくなって
こんなに自分に利があって楽しい事があっていいのかと思ってしまうくらい
毎日が充実していた
「虹村さん一緒に帰ろ」
「今日はダメだ。残って練習すんだよ」
「じゃあ私も残るー」
「…女子体育館はここじゃねぇだろが」
居残り練をしていた虹村と知り合って
付き合い始めてもう数ヶ月
初めての恋人
何をするのも初めてで
しょっちゅう男子バスケ部に様子を見に来ては
女子バスケキャプテンに怒られていた
バスケに一生懸命な虹村が好きだ
怖い顔して優しい虹村が好きだ
私に欲情してる時の雄っぽい顔も全部が好き