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リンゴ

第10章 笠松幸男







「んはっ…笠松さん…んっ」


「ん…さや…」



そっとさやの頬に触れた笠松は
さやの目から涙が流れているのに気づいた

ふわっと微笑んだ瞳から

ぽろりと涙が落ちる



「…悪ぃ、嫌だったよな」


「全然っ…そんな事ないです
私、笠松さんに優しくされると

ダメになっちゃうみたい…」



切なそうな顔で焦る笠松をぎゅっと抱き締めた

この優しい人に甘えたい
もっと優しくされたい


笠松はそっと抱き締め返すとごろんと横になり
さやの髪をくしゃくしゃっと撫でた



「…よく泣くんだなお前は」


「笠松さんのせいですっ…」


「んだそれ!ったく…」



こんなに素直に涙が出るのは
紫原以外いないと思っていたのに

ぽろぽろと涙を流しながら笠松の首に巻き付くと

その骨っぽい手が少し乱暴に頭を撫でる




「ふふっ…なんで笠松さんの前だと
こんなに甘えられるんでしょう…

敦じゃなきゃダメだと思っていたんです、私」


「知らねぇよ。
つーか、俺の腕の中で他の男の名前出すんじゃねえシバくぞ!」


「あいてっ」




ピシッとデコピンをくらい涙が引っ込む

笠松の顔を見るとむすっとしながらも
雰囲気が穏やかでさやは微笑んだ



「…ったく。
まあとりあえず飯でも食うか」


「私作りますよ」


「まじか。上手いらしいな飯」


「一応何でも作れますよ」



ちゅっとリップ音をたてて
今度はさやからキスをする

笠松は一瞬驚いたが顔を歪ませて笑い
もう一度笠松からもキスを落とした




***





「何が食べたいですか?」


「何でもいい」


「じゃあハンバーグの材料があるので
ハンバーグでいいですか?」


「おう」



リビングに降り、キッチンをお借りして
調理をはじめる。

ハンバーグと人参のグラッセ
野菜のコンソメスープとサラダ







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