第10章 笠松幸男
「ち、近ぇよ」
「…笠松さんの近くにいたいんです
それに、この前思ったんですけど
笠松さんっていい匂いしますよね」
制汗剤か何かですか? と言いながら
笠松の胸板に鼻を寄せるさや
柑橘系の香りに近い匂いがする
他称匂いフェチのさやは
すんすんと鼻を鳴らしその匂いを堪能する
「嗅ぐな!変態!」
「えー…残念」
「(そんな事ばっかされてたら理性が吹っ飛ぶ!
つか、いい匂いなのは
俺じゃなくてお前の方…。)」
そっと離れようとするさやを
笠松は思わず、バッと掴み引き寄せる
甘い香り。
甘いのに何故かずっとかいでいたくなるような
さや独特の香り
笠松はさやの首元に顔を寄せ
すぅーと息を吸い込んだ
「…なんかつけてんのか?」
「いえ…んっ…」
「甘い、な…」
笠松の息が首にかかる
くすぐったいような気持ちいいような
思わず声が漏れ出る
笠松がまさかここまで積極的になるとは
思ってもみなかったさやは頬を淡く染める
恥ずかしいって久しぶりね…
「さや、顔赤ぇ…」
「だ、だって笠松さんが積極的だから…」
「形勢逆転だな」
笠松はにやりと笑うとさやを横抱きにし
ベッドにそっと寝かせ
覆い被さるようにして見おろした
染まる頬、潤む目
白くて綺麗な肌が欲情を誘い
広がる艶やかな髪がさやを引き立てて
1枚の絵画のようで
「綺麗だ、さや」
「笠松さ、…んんっ」
綺麗すぎてむしろ汚したくなる
自分のもので色付けて、自分のものに
ちゅっと口付けて離してはまた口付けて
優しく壊さないように、汚して
ぷるぷるの唇を啄むように味わう
「んっ…ちゅ…んん」
「はっ…ん…」
何度も何度も優しいキスが落ちてきて
笠松の唇から伝わる熱が
たどたどしいキスが気持ちよくて
大事にされている気がして
目から涙が伝わっていく