第9章 日向順平
「あんまり濡れなくてよかったわ
皆ありがとう」
「お、おう。」
「真ちゃんやべー俺パンツまでぐしゃぐしゃ」
「俺もなのだよ…
だが、さやを守れたなら本望なのだよ…」
「……これは設計ミスとしか言い様がないですね」
「どうすんだこれ」
全員カッパを着込んでたのにも関わらず
上から下までぐっしょりだった
もちろんさやは必死に守られたおかげもあって
軽く水しぶきがかかる程度だ
幸い今日はよく晴れ風も吹いているので
1時間もすれば多少よくなるだろうが
さやは笑みを浮かべると
濡れている全員の頬に唇を落としていった
「本当にありがとう
でも皆が濡れてしまって申し訳ないわ
タオル買ってくるわね?少し待っていて」
「待て待て!
1人で行ったらナンパ野郎にまた絡まれるぞ!」
「順平さん…でも、みんな濡れてるし」
「店!店の前まで俺が行く!」
焦る日向に押されさやは渋々2人で店に向かった
お店はジェットコースターのすぐ横で
みんながいる場所からはそう離れていない
皆ジェットコースターで濡れていくのか
タオルが店外にも置かれ、次々に買われていく
「げっ高ぇな。さすが遊園地」
「そうですね
でもまあ仕方ないです」
「だなー…俺もびしょびしょだし
ん、じゃあ買ってきて貰えるか?」
日向は自分の財布をさやに差し出す
さやはきょとんとしながら
一応受け取った
「えっと…順平さん
これ、皆の分もって事ですか?」
「まあ一応俺だけ先輩だからな
それくらいはしてやんねーと」
火神にはチケット貰ったし と頬をかきながら言う日向
ああ…純粋にいい人だ、この人は
だから惹かれたのかもしれない
気まぐれでも
胸の奥がぎゅっとなって
たまらなくて、さやは日向にそっとキスをした