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偽物女優【恋プロ長編◆裏】

第2章 身代わり


急いで着替えを済ませ、スタジオに戻る道中。

ふいにスマホが鳴り、衣装の隠しポケットから取り出した。


「メール? 相手は誰………、」

なかばで途切れる言葉。その差出人は。


「密花………? 一体どうして………、」

呆然と呟く声。



気づくと、駆け出していた。



『姉さん、ごめんなさい。密花の我儘を許してください。


 私が七神密花として築いてきたものを、ぜんぶあげるから。


 だから、私が帰るまで、そのまま私の身代わりをして欲しいの。


 いつかきっと戻るから。心から大好きだよ、姉さん』

心臓が不穏に脈打って、けれど脚を止めるすべはなくて。


(どうして、密花………!!)

答えのない問いが、胸のなかでさざめいた。


息が切れても、脚がもつれて転びそうになっても。

走って、走って、また走って………。


(あの子がこんな風に消えるなんて………!)

怒りとも戸惑いともつかない感情が、染みのように広がった。

すれ違いざまにスタッフやほかの芸能人から向けられる声も

傍観者のような視線も、すべてを無として。




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