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偽物女優【恋プロ長編◆裏】

第2章 身代わり


「カット! OK!」

声がかかり、律花はほっと息をついた。


「お疲れ、密花!」


「ありがとう、ルビー」

ぱちん、と手と手を打ち鳴らして、微笑い合った。


(あれ………?)

どこからか視線を感じて、きょろきょろと瞳を巡らせた。

とらえたのは、チョコレートブラウンの髪をした幼なじみ。


「ハク………?」

知らず名前を呼ぶ。

刹那、彼と視線が絡むと。



風に包まれ、消えていった。



「密花………?」

温かな手の感触に、初めて現実世界へと帰ってくる。


「ぁ………ううん」

微笑って見せると、ルビーはほっとしたように目元をゆるめた。



集中しなきゃ、私が身代わりだってばれないように―――。



きゅ、と胸元を握りしめた。


(きっと大丈夫よ。

私達のことをよく知ってるのは、私達だけなんだから)

次の撮影の準備をするスタッフ達を見つめながら、思考に載せる。


「密花、次の撮影がはじまってしまう。

はやく着替えてきて」

ケイトが背を押しやる。


「わかってるよ。いま行くから、」

ふわりと栗色をゆらし、楽屋へと消えていく。

棘のある笑みを浮かべていたその女に、気づかないままに………。




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