第2章 身代わり
CMは、化粧品のものだった。
木造りのちいさな家のなか、窓辺に寄りかかり声に載せる。
「小人さんたち、遅いな………。」
ぴょんと窓枠にやって来て、胡実をねだるリス達に、自然と唇がカーブを描いた。
「ふふ………、可愛い子ね」
ふわふわの毛並みを撫で、ひとり微笑んだ。
「お嬢さん、お水を一杯もらえるかな?」
いつの間にか、黒いフードをかぶった青年がそこにいた。
不思議に思いながらも、彼に微笑いかける。
「えぇ、どうぞ………。」
差し出したグラスを、ゆっくりと飲みほす。
「有難う。お礼にこいつをあげよう」
『手を出して』と告げられ、そろえて出した掌に落とされたのは
ケースに雪の結晶の刻印が高直なルージュ。
「まぁ………! 素敵なルージュ………!」
目を輝かせる白雪姫に、彼は微笑みかけた。
「塗ってあげるよ」
顎をとらわれ、彼の体温を感じて鼓動がはねたとき。
するりと青年の手が離れていく。
「毒林檎よりも危険な魔法。
金糸雀堂新色ルージュ、レッドグリムであなたも恋、しよ?」